嘘八百日記

このブログ記事は全てフィクションです。

大学時代の友達と飲んだら奇怪な出来事が起きた

昨日は大学時代の友人たち3人と飲みに行った。その時の話をしようと思う。


その日の飲み会ではレンタルルームを借りて、それぞれが料理や酒を持ち寄って行った。

各自の嗜好性の現れたおつまみや酒を味わうのはなかなか良かった。ジンバブエ出身の田中が持ってきた黒イモリの姿焼きは日本では滅多に食べないものだったので、食べられて嬉しかった。

そんな料理の中で、鈴木が持ってきたものはかなり珍しいものであった。

「最近ピザ窯をベランダの室外機の上に作ってさ、ピザ焼くのに凝ってんだよ」

とはにかむ鈴木は、その名も「ミラクルピザ」というピザを持ってきていた。

ハッピーピザなら分かるが、ミラクルピザとは一体何なんだろうか。疑問に思った私は彼に聞いた。

「そりゃあ、ミラクルなピザなんだわ」

鈴木はニコニコとはぐらかすだけで詳細は教えてくれなかった。

ラクルピザの見た目は殆ど普通のピザなのだが、1つだけ他のピザとは一線を画す特徴があった。

それは、ピザの真ん中にサグラダファミリアが建っている、というものである。

ピザの上に世界遺産が建っているのは初めて見た。それは田中たちも同じようで、シーランド出身の山田にいたっては驚きすぎて顎がメビウスの輪を形成していた。

「ピザの上にサグラダファミリアが建っているのなんて、本場では常識なんだよ。お前ら遅れてるな!」

鈴木はそんな私たちを見て、時代遅れだと揶揄した。鈴木がそういうのなら、それは普通のことなのだろう。私はそう思うことにした。

とりあえず、ミラクルピザを食べることにした。サグラダファミリアを几帳面に8等分し、それぞれ取り皿に取り分ける。

一口食べる。トマトソースの酸味とアンチョビの塩気がいい塩梅であった。トッピングのチーズが香ばしい。

なんだ、普通のピザじゃないか。そう思ったのだが、私は気がつくと怪力乱心な三角定規の夢を垣間見ていた。

普通という八百比丘尼の神々が定めし杓子に勿論私は異議を申し立てたい。否、これが幸せの秩序維持なのだ。今ここに宣言する!上原亜衣の羊水の如き安寧に身を委ねて見るそれこそが操なのだと!

魑魅魍魎の腸の温度が絶対零度となるこの時、鈴木が創成し寺社仏閣の複雑怪奇がなせる技なのだ。

健康ランドに行こう!いざ取り戻さん!我が青春の青写真を!それ故煉瓦釜の申し子は我らが地球防衛軍の元へ舞い降りたのである。私は跳躍する!キリストは3日で復活なすった。胸の内のオフィーリアを解き放つのだ!宵闇の彼方に映える二三が六へ舵をとれ!


気がつくと私は知らないベッドで寝ていた。

ここは病院らしい。頭や腕が包帯で巻かれていて、身じろきをするとあちこちが痛い。

後から来た看護師に事情を聞くと、どうやら私は鈴木のミラクルピザを食べた後、妙な演説をしながら自らベランダから飛び降りたのだそうだ。全く記憶にない。

見舞いに来た鈴木はかなり憔悴した様子で、「もうミラクルピザは作らない。本当にすまなかった」と私に謝ってくれた。

その時のことを全く覚えてない私はあまり実感がなかった。私はそこまで謝らなくても大丈夫だと言って鈴木を見た。彼は既に私の方を見ておらず、どこか遠くを見るような目をしていた。

「やあやあ我こそがお代官様!二三が六は地平を照らす道標!極楽鳥羽ばたく群れは縷縷として続き、暇潰しの秩序は今解き放たれる!」

彼はそう叫びながら、病室の窓を破って飛び降りてしまった。