嘘八百日記

このブログ記事は全てフィクションです。

スウェーデン人の奇妙な風習

先日、スウェーデン人の親戚の結婚式に行ってきた。彼女はスウェーデン人とスウェーデン人の間に生まれた生粋のスウェーデン人だ。

彼女と私の関係は従姉妹で、母親同士が姉妹である。私の父は日本人なので、私はスウェーデン人と日本人のハーフということになる。私と会ったことのある人ならば、私の容貌からスウェーデンの血が流れているということには容易に気づけるだろう。

私と彼女はよく小さい頃に遊んでおり、歳上の彼女は私の下らない遊びにも笑いながら付き合ってくれた優しいお姉さんだった。

そんな彼女が先日、日本の職場で出会ったスウェーデン人男性と結婚した。2人とも日本在住ということもあり、式は日本で執り行われた。

新型のウイルスが蔓延している関係で式は親戚しか参加しない小規模なものだった。会場はK県Y市の某イタリアンレストランであった。

挙式は既に行っていたため、その日は披露宴のみであった。彼女が母親への感謝の思いを綴った手紙を読み上げるシーンでは、涙腺がカーメルタザイト(2019年に新鉱物認定されたダイヤモンドより硬い鉱物)並に固いと言われてきた私ですら涙を流さずにはいられない程の感動的なものとなっていた。

会食や余興、花束贈呈などが済み、記念撮影の時間となった。

撮影は新郎の希望で近所にある広々とした公園で行われた。ここで新郎が不可解な行動を起こす。

なんと、鞄から丸鶏を2羽を取り出し、「これを○○(従姉妹の名前)と2人で投げているところを撮影して欲しい」とカメラマンに言ったのだ。

カメラマンも戸惑っていた様子だったが、新郎の頼みだからと渋々了承していた。これがその時に取られた写真である。
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丸々太った鶏肉を笑顔で投げている新郎新婦の様子は正直不気味以外の何物でもなかった。

撮影も終わり、再び会場に戻って残りのプログラムを消化し、最後に新郎新婦が招待客の帰りを見送る場面で、私は新郎に「先程はなぜ鶏肉を投げていたのか」と尋ねてみた。

すると新郎は、「これは僕の故郷でめでたい時に行う慣習なんだよ」と答えてくれた。招待客は他にもいたのであまり長々とは聞けなかったが、簡単に要約すると以下のようなことを話していた。

・彼の故郷の街では、ニワトリは魔物たちが蠢く夜を追い払い、朝を告げる生き物ということで縁起の良いものとされている。
・そんなニワトリを祝いの場で天高く投げることでその先に続く人生をつつがなく過ごすことが出来る、と言い伝えられている。
・本当は生きたニワトリを投げたかったのだが、日本で生きたニワトリを扱うには自治体に届け出をする必要があり、手続きが大変だから今回はスーパーで売っていた丸鶏で済ませた。

私は、世界には様々な文化があるのだなと感心せざるを得なかった。日本で暮らしてきた私には到底理解出来ない習慣だが、スウェーデンにある彼が住んでいた街ではそれが当たり前なのだと言う。

男根を象った神輿を担いで町中を練り歩く祭りや、ナメクジを飲み込んで咳を止める風習など、同じ日本に住んでいても奇妙に感じる慣習が今でも残る地域がある。そのような変わった伝統がこの先消えることなく続いていってほしいと願うばかりである。